甲状腺について
甲状腺の役割
食物として摂取されたたんぱく質、脂肪、炭水化物は代謝され、体の組織を作る材料や体を動かすエネルギー源として利用されます。甲状腺ホルモンにはこのような新陳代謝の過程を刺激し促進する作用があります。また、胎児の発育や子どもの成長にも重要な役割を持っています。
甲状腺ホルモンには、4つのヨウ素を持つサイロキシン(T4)と、3つのヨウ素を持つトリヨードサイロニン(T3)の2種類があります。
甲状腺ではおもにT4が合成されますが、肝臓などでT4がT3に変換されることによってホルモンとしての働きを発揮するようになります。
甲状腺の疾患について
甲状腺疾患は疫学調査では10人に1人は持っており、一般に男性に比べ女性に多いと言われています。
健康診断などで、甲状腺の異常を指摘される方も多く、頻度の高い疾患と言えます。
甲状腺ホルモン過剰の疾患
バセドウ病
無痛性甲状腺炎
亜急性甲状腺炎
機能性結節性甲状腺腫
妊娠性甲状腺機能亢進症
など
甲状腺ホルモン低下の疾患
橋本病(慢性甲状腺炎)
潜在性甲状腺機能低下症
萎縮性甲状腺炎
医原性甲状腺機能低下症
など
甲状腺の腫れやできもの
橋本病
単純性甲状腺腫
甲状腺のう胞
腺腫様甲状腺腫
甲状腺良性・悪性腫瘍
など
甲状腺の疾患を疑う症状
倦怠感や疲労感、むくみなどが症状として多くでます。また、しこりが触れたり、首の圧迫感として感じることもあります。
典型的な症状がでないこともあり、結果として、消化器内科や循環器内科、婦人科、心療内科など、複数の診療科を受診するような様々な症状が出ることもあります。
甲状腺ホルモンが多い
ドキドキする
暑がり
汗が多い
手足の震え
イライラする
体重減少
軟便
希少月経
甲状腺ホルモンが少ない
脈が遅い
寒がり
皮膚がカサカサ
言葉や動作がのろい
眠い、物忘れが多い
体重増加
便秘
過多月経
甲状腺の診察・検査
視診・触診
甲状腺がある場所(のどぼとけの下)にしこりがないか目で見て、指で触って確認します。
正常の甲状腺組織は軟らかく、体の表面からでは触れることができませんが、甲状腺にがんや良性腫瘍ができると、しこりとして触れることがあります。
採血
採血での測定は、主に血液中のFT3、FT4 、TSHを測定し、甲状腺機能の評価を行います。
また、甲状腺機能亢進症(バセドウ病など)や甲状腺機能低下症(橋本病など)の診断に有用な抗体や、サイログロブリン等の測定も行います。
超音波検査(エコー検査)
甲状腺腫瘍の診断において最も有用な検査です。しこり(腫瘍)の有無や部位、サイズだけでなく、良性腫瘍と甲状腺がんの区別、さらには甲状腺がんのタイプまで推測することが可能です。痛みを伴うこともなく、所要時間も3~5分程度で終了する負担の軽い検査で、放射線被爆もないことから、妊娠・授乳中の方でも安心して受けて頂けます。